ハムの最後の日

1999年8月13日(金)

この日、ハム爺さんがお星様になった。
ハムの死についてはある程度心の準備があった。
最近歩き方もヨロヨロで、眠っていることが多くなっていたからだ。
しかし、現実の彼の死は穏やかなものではなかった。

ハムは少し前に胸のあたりに腫瘍のような物ができ、
それを齧ってしまって傷になっていた。
飼い主は臆病な年寄りハムを病院には連れて行きたくなかった。
しばらくするとそれは小さくなり、それ以来変化がなかった。
しかし、結果的にそれがハムの死と大きく関わる事になった。

8月12日。会社から帰るとハムはいつも通りだった。
その日はハンバーガーを買って帰ったので
バンズをあげたら奪い取って食べていた。
とても元気だった。
23時頃、何の気なしにハムを見た飼い主は血の気がひいた。
ハムがいるその場所の巣材が真っ赤に染まっていたのだ。
小さなハムの体と、大きくそしてタップリと広がった血のシミは
とても絶望的な風景であった。
ハムはただボーッとそこにうずくまっていた。
鳴き声もたてず、表情も変えず、ただ背中が脈うっていた。
飼い主には何もできなくて、動かす事も怖くて、ただ背中を撫でていた。
ハムは背中に手をのせると、ただ動かずに目をつぶった。
飼い主は起き上がっているのが辛くなって、しばらく横になっていた。
しばらくしてまた見ると、ハムはそのままの格好でただ脈打っていた。
背中に触っても反応しなかった。でも、声をかけたら頭を少しあげた。
しかし、すぐに元のポーズに戻って動かなくなった。
またしばらくして、8月13日、午前1時。ハムはもう脈打っていなかった。

ハムの亡骸はとても痛々しかったが、
飼い主はあまりの事に手足がしびれてしばらく動けなかった。
ハムの亡骸をウリウリ達のプランターに埋葬した時には5時頃になっていた。
このプランターは定員満杯だろう。
ハムの血はお腹一面を赤く染めていたが、
やはり胸の腫瘍あたりが元のようだった。
きっとまた噛んでしまったのだろう。きっと深く噛んでしまったのだろう。

もし、ハムを病院に連れて行ったら何かが変わっていただろうか。
それとも、それでも同じように最後を迎えたのだろうか。

ハムは私が最初に飼ったハムスターである。
最初はハム1匹だけを飼っていて、かなり入れ込んでいたし
1番付き合いが長いので、たくさんの思い出がある。
面白いやつで、よく笑わせてくれたから、こんな死に方は余計に悲痛に感じた。
できれば静かで穏やかに死を迎えさせてあげたかった。
推定2歳3ヶ月。飼い主との付き合いは2年2ヶ月。
長い間、本当にありがとう。




8月11日のハム。


8月12日。あんなことになる直前のハム。


これが本当に最後の写真になった。この時は何事もなかったのに。